〇 沖縄では九月九日をクングワチとかクニチと呼び、盃に菊の葉を浮かべた
菊酒を仏壇や火のカミに供える習俗が、ほぼ全域にわたってみられる。
(『沖縄・奄美の衣と食』)
〇 節句には菊の花を用いる。県下の氏神まつりはこの日に多く、今年とれた
新しい藁でツツコをこしらえ、中に新米の強飯とシトギ(神に供える生粉の餅)
とを入れ、御幣とともに氏神や水神などにあげる。 (『日本の民族 福島』)
〇 館山市鉈切では九月九日を節供といい、赤飯・甘酒などを家の神や村の神社に
供える。 (『日本の民族 千葉』)
〇 クンチ 九月節供・菊まつりともいい、餅つき、菊酒を飲み雑煮を食べて
仕事を休む。近親者間で、餅の贈答を行う。 (『美作の民族』)
〇 九月九日を九月クニチと称して仕事を休んでごちそうをする。(内深田)栗飯を
蒸し、菊酒を飲む。(三間)上家地では栗を食べなければならぬといい、正月に
用いる栗をこの日にゆでて干す。 (『宇和地帯の民族』)
〇 栗飯を炊き神仏に供える。(各地)ツクリハツオといって初穂を親方や親類に
持っていく。(小栗毛) (『くにさき』)
旧暦の九月九日は、現在でいうと約一ヶ月おくれの十月。早稲の稲作の収穫時期に
あたる。収穫後の骨休みとする地域もあり、この日をクニチ・クンチ、あるいは
オクニチ・オクンチとよぶところが全国的にみられる。九州地方では一般的に秋の
まつりをそう呼んだ。九月九日、十九日、二十九日に行われる秋まつりをさし、「三九日(みくにち)」
と呼ぶところもあった。
クニチには、栗飯を食べる地方も多く、この日は「栗節供」とも称される。クニチの
食物は、赤飯・餅・団子・粥・甘酒など、地方によってさまざまである。
とくに、クニチにナスを食べる風は、東北から関東、長野県などにおよんでいる。
茨城県では三九日茄子、埼玉県ではクンチ茄子などと呼び、これを食べると中風にならないといい伝えられている。
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